昔、佐渡のある村に百姓の若夫婦が住んでいました。子供もまだなく、両親ともすでに他界していたので、さびしい思いをしていました。
ある日、親を売るという商人がやってきました。夫婦はちょうど親孝行がしたかったので、喜んで親を買う事にしました。さっそく200文のお金を払い、きっと貧乏で可哀そうな爺さんと婆さんだろうからと、温かい綿の入った着物を用意する事にしました。貧乏でお金が無いので、自分たちの着物と布団を解体して、着物を作りました。
七日経って、いよいよ親を迎えに行くと、何とそこは立派な屋敷の大金持ちの家でした。屋敷の中では、沢山の息子娘がいて、みな自分が多くの財産を譲り受けようと大げんかしていました。そこへ貧乏夫婦がやってきて粗末な着物を手渡したので、長者の息子たちは大笑いしました。
しかし、大金持ちの老夫婦は「こんな孝行者の子供が出来て良かった」と言い、本当の子供として屋敷に迎え入れました。そして、老夫婦の財産は全てこの百姓夫婦に譲り渡し、やがて夫婦にかわいい子供も生まれ、末永く幸せに一緒に暮らしました。